施設で暮らすことを自ら選んだおばあちゃんの話

介護の仕事に就いて今年で12年経ちます。

様々な施設で、数え切れないくらい沢山の
おじいちゃんおばあちゃんにお会いしてきました。

入居されている方のほとんどは、
介護が必要になって自宅での生活が難しくなり、
ご家族が施設入居を決めて
ご家族が施設を選んでいらっしゃいます。

本人自ら「施設に入ろう」と決めて行動されるケースは
あまりないかもしれません。

私がお会いした沢山のご利用者様の中で
ご自分で入居を決めて、施設を選んだという方は
今のところ、お一人だけです。
(もしかしたら、お話ししなかった方の中にいらっしゃったかもしれませんが…。)

 

そのお一人は、
10年ほど前に勤めていた老健(介護老人保健施設)に
入居されていた80歳(当時)のおばあちゃん。
(以降、Fさんとします)

小柄で華奢な体つきでしたが、
杖も使わずにご自分で歩くことができ、
毎日3食「ありがたい」と手を合わせてから
一粒も残さずに召し上がり、
手工芸や書道などのレクにも積極的に参加され、
私たちスタッフや周りの方との関わりを
楽しみながら過ごされている方でした。

 

お家でも問題なく生活できそうだけどな…と
思うほど、お元気なFさんがご自宅を売って、
施設生活を選んだのには、このような背景がありました。

最大の理由はご主人の他界。

ず~っと一緒に暮らしてきた一軒家は
一人で暮らすには広すぎる。

家の中のどこを見ても
「お父さんはもういないんだな」と感じてしまって
ますます淋しくなる。

食欲も、一人分のご飯を作る気力も湧かず、
適当に食事をすませていた結果、
低栄養になり、入院してしまった。

息子さん夫婦が同居を勧めてくれたけど、
Fさん自身、義理の両親との同居で
苦労した経験があるだけに
お嫁さんには同じ思いをさせたくない。

かと言って、
退院して自宅に帰って
一人で暮らしていく自信はない。正直怖い。

息子夫婦の負担になりたくないけど
心配もかけたくない。

自分も家族も安心して暮らせる場所はどこだろう?

「そうだ。施設に行こう。」

 

一般的に何となく、施設入居=最終手段
というようなイメージがあると思うのですが、
Fさんにとっては最終手段ではなく、
安心できる生活を送るための最良手段だったのですね♪

Fさんからお話を聞いていて
「施設に入る」というよりも「施設で暮らす」
というニュアンスだな~と感じました。
ここまでさんざん「施設入居」と書いてきましたが(汗)
「施設で暮らす」と表現すると
今までの生活の延長にある、ごく普通なことで
前向きなイメージすら湧いてきます。

実際 Fさんは、前述のとおり
施設での暮らしをご自分なりに楽しまれていて
いつもニコニコされていました☺

Fさんが施設で暮らすことを決めてから
まず始めたのは情報収集。

「これから先を自分らしく安心して過ごしたい」
という場所ですから「どこだっていい」というわけではないですよね。

病院のソーシャルワーカーさんや、役所の介護福祉課、
ご家族の介護をされていたご近所さんなどに
どこにどんな施設があるのか、評判はどうなのかを
色々聞いてみたそうです。(スゴイ!)

ご近所さんが「いろんな施設をむやみに探していくのは時間もかかるし、疲れる一方。
探す前に条件を出しておく方がいい」と助言してくださり、
さっそくFさんは「こういう所がいいな」という条件を考えたそうです。
確か↓こんなような内容だったと思います。

●個室を利用できること
●部屋が明るいこと
●今の住まいと同じ県内であること
●クラブ活動や行事が充実していること
●リハビリしてもらえること  etc.

これを元に、地域包括支援センターで施設を何軒か紹介してもらい、
息子さん夫婦と一緒に見学して廻って決めたのが
私が勤めていた老健なのでした。
(正確にはFさんが入居されたのは 私が入職する前です)

こちらの施設は全室個室。(しかもけっこう広い!)
ユニット型ケア(一人一人のプライバシーや個性を尊重し、
それぞれの生活のリズムに合わせてサポート・ケアを行うスタイル)で、
クラブ活動もリハビリもレクも充実している施設でした。

窓も大きく、開放感があって
こうして今、思い返してみても
Fさんの条件にぴったり合う施設だったなぁとつくづく。

「ここでの暮らしはどうですか?」とお聞きしたら
「申し分ないわよ(^^) あなたとこんな話もできるし♪」
と笑顔で即答してくださいました。

ちなみに老健は、基本的に『在宅復帰』を目指す施設で
終身(亡くなるまで)居られるところではありません。
Fさんは、それもしっかり理解されていて
「ここで暮らしながら次の施設を念入りに探すの」と…。
もう本当にスゴイ!

その後、わたしは異動で別の施設に移ってしまったので
Fさんがあれからどうされているのかは分かりませんが、
この時の会話は、10年以上経った今でも覚えているほど
強く印象に残っているんです。

独りになっても、介護が必要になっても
自宅で暮らし続けることはとても素晴らしいことだけど
Fさんのように、息子さん達に心配をかけることなく、
安心できる生活を求めて
施設入居を選択することも素晴らしいことだと思います。

何より「こういう所がいいな」という希望を
家族と共有して、一緒に施設を探して決めたことに心を打たれました。

 

これを読んでくださっているあなたにも
いつか、親御様の施設入居を考えなければならない時が来るかもしれません。
その時あなたは、どんな施設を選びますか?
どうやって探しますか?

面と向かっては聞きづらいことですが、
今、親が元気なうちに『条件』を聞いておきませんか?

近い将来、もしくは今現在
施設のことで悩んでいる方は こちら のフォームよりご相談くださいませ。

 

関連記事

  1. おじいちゃんとのShall we ダンス?~転びやすい高齢者…

  2. 『いつか会おうね』の約束を果たせないままのあなたに伝えたいこ…

  3. 俺より先に死んではいけない~夫が妻を看るということ~

  4. 長女の終活ってどんな終活!?

  5. 手から伝わるコミュニケーション~目に見えるケアから始まること…

  6. 終活を始めるきっかけ色々~船上フォト~

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP